2012年12月6日、「プロセスマネジメントアワード2012」が品川プリンスホテルで開催された。
プロセスマネジメント大学の全国7校から7人が出場し、プロセスマネジメントの導入を通じて、いかに営業改革に成功したかをアピール。
「属人型営業からの脱却を目指して」をテーマにプレゼンを行ったダイヤモンドソサエティ(大阪府中央区)の東京支社営業部販売課の松岡祐二係長がグランプリを獲得した。
松岡氏と彼の上司である同課課長代理の渡辺真二氏に、営業改革の取り組み、プロセスマネジメント大学で学んだことについて伺った。
株式会社ダイヤモンドソサエティ様 概要
株式会社ダイヤモンドソサエティ様は会員制リゾートホテルの運営と会員権の販売を手がけています。
会員数は全国で約1万9000名を数え、ホテルは全国15カ所に展開。東京支社では、2010年10月にリニューアルオープンしたダイヤモンド箱根ソサエティの会員権を主力商品にしています。
営業マンごとに言っていることもやっていることもバラバラで、上司の指導も感覚的なものになっていました。
―プロセスマネジメントを導入した目的は
【松岡様】
属人型営業の克服が、当社の大きな課題になっていました。今までの経験をもとに、何となく「こうすればいいのではないか」と営業活動をしていたので、営業マンごとに言っていることもやっていることもバラバラで、上司の指導も感覚的なものになっていたのです。
【渡辺様】
属人型営業では課題の抽出やアドバイスが難しいため、「目指すべき結果に至る営業活動を分解し、そのプロセスを見える化し、標準化する」というプロセスマネジメントの手法が有効だと思いました。
属人営業では若手も育たないので、トップ営業マンの行動をプロセス化し、それを皆で共有する方法を学びたいと考えたのです。
―営業プロセスにどんな課題があったのですか
【松岡様】
当社の営業プロセスは問合せの受付からスタートし、お客様に資料送付や電話、訪問などの一次アプローチを行い、お試しで1度ホテルに泊まっていただく体験宿泊へと進んでいきます。私たちはこの体験宿泊を「セールスのつぼ」と考え、体験宿泊時にクロージングまでもっていくことを目標にしていますが、体験宿泊後のクロージング率が伸び悩んでいました。
(プロセスマネジメントアワード2012 松岡様発表時の様子)
当営業部が抱えていた課題は、第1に、約20名の営業マンの行動や案件の進捗状況が見えなかったこと。そして第2に属人的な営業スタイルです。さらに第3に、1人の営業マンが(案件の)スタートアップからクロージングまですべてを処理するので、実質的な営業に取り組む活動量が不足していました。
「eセールスマネージャー」を導入し、営業活動の可視化を図りました
―どう改革を進めましたか
【松岡様】
第1に、営業部の主任以上の役職者が全員プロセスマネジメント大学を受講し、プロセスマネジメントの考え方を社内に浸透させました。
そのうえでソフトブレーンのSFA/CRMシステム「eセールスマネージャー」を導入し、営業活動の可視化を図りました。それと併行し、トップセールスマンの行動を分解して当社オリジナルの面談ステップと必要なスキルを「5ステップ66スキル」に体系化しました。
(プロセスマネジメントアワード2012発表資料)
加えて「セールスのつぼ」である宿泊体験のWBS(プロセス構造分解図)を作成。
それらを「eセールスマネージャー」と連動させることで、マネージャーと営業マンが、今やるべきこと、できていないことを明確化することができるようになりました。
プロセスマネジメントでクロージング率が3.6倍に!!
―具体的にどんな取り組みを行いましたか
【松岡様】
宿泊体験のWBSでは、館内案内の順序からお客様と交わす会話の内容、商品説明時に座る場所までを、こまかく規定しています。ダイヤモンド箱根ソサエティの場合「ラウンジから2つ目のソファーセットで芦ノ湖を眺める位置への誘導」という項目を設け、これを全員が必ず実行することにしました。
一方、先の「5ステップ66スキル」から最低限必要なキルを抽出した「5ステップ24スキル」、面談の際にお客様が見せる抵抗にうまく対処するための切り返しトークをまとめた「切り返し事例集」などを作成し、昨年から2週間に1回、定期的にロールプレイングを実施しています。
ロールプレイングは営業マン役、お客様役、評価者の3人1組で進め、「5ステップ24スキル」をもとに評価やアドバイス、意見交換を行い、営業マンのスキルの均一化および属人的な営業スタイルからの脱却を図りました。
―どんな成果が出ましたか
【松岡様】
これらの活動を始めた2010年11月に9%だったクロージング率が33%(12年10月期)へと、約3.6倍向上しました。
また約2年間の取り組みを通じて、各営業マンが1件の成約を取るために必要な活動量、すなわち「活動の歩留まり」が見えてくるようになりました。
それをもとに昨年10月から、各営業マンごとに目標から逆算して活動指標を設定し、週・月単位で進捗状況を報告するようにしています。
(プロセスマネジメント大学 成功物WBS)
(芦ノ湖の見渡せるロビーの風景)
営業改革の手法を組織を挙げて学び続ける
―2人ともプロセスマネジメント大学を受講されています
【渡辺様】
当社では2009年4月から、私と松岡を含めて22名が、プロセスマネジメント大学の東京・大阪・名古屋校で代々学んできました。講義や宿題を通じて、自分たちが抱えている課題を解決する方法を考えていく作業が、パズルを解くような感覚で楽しかったですね。
宿題などを会社に持ち帰り、周囲を巻き込んでプロセスマネジメントの話をしていくなかで「共通言語」が整い、部下とも話がしやすくなりました。私が以前作ったWBSも、後輩たちの手によって、新しいものに進化し続けています。
【松岡様】
私は以前から、プロセスマネジメントとはどんなものかを渡辺さんから聞いていたので、すんなりと入っていくことができました。
普段はなかなか異業種の方と接する機会がないのですが、同校で一緒に受講した他の企業の方と、同じような課題を持つ仲間として情報交換ができたので、非常に良い機会が得られたと思います。
プロセスマネジメントのいいところは、自分の課題、とくに何ができていないのか、何をすべきなのかが自分でわかること。上司から指導を受けても、こうだからこういう結果になるということが納得でき、非常に説得力があります。
【渡辺様】
営業マネージャーの仕事とは、ロールプレイングゲームで、地図のA地点からB地点に行く途中に隠れているカベを見つけて乗り越えるようなもの。私の場合、その手法としてプロセスマネジメントが役立ちました。
プロセスマネジメントを通じて、課題というカベを明確化することで、問題解決のための扉が開けてくると思います
―お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※プロセスマネジメント大学
マスターコース2009年4月開講受講
営業部東京支社販売課 課長代理 渡辺真二様
マスターコース2010年10月開講受講
東京支社 営業係長 松岡 祐二様
(プロセスマネジメントアワード2012 グランプリ受賞
左から松岡様、富様、渡辺様、担当講師野部)